十勝2×4協会

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当たり前のことを必死にやる重要性

2016.07.07

先日、帯広で工務店経営セミナーがあり、当協会のメンバーも何名か参加しました。
講師は、新潟市で「オーガニックスタジオ新潟」を創業し、わずか3年で「行列のできる工務店」にした社長の相模稔さんです。
 
相模さんは大学卒業後、大手住宅FCのスーパーバイザー(FC加盟店に経営指導などをする)として活動され、その後大手ハウスメーカーで営業をしていました。
2007年の中越沖地震の後、「地元に役立つ住宅会社を作りたい」と一念発起して今の会社を創業します。
 
年間施工棟数は20棟前後で、本州の工務店としては決して多い方ではありません。
しかし、北海道の北方型住宅並みの高性能住宅を標準仕様にし、自然素材をたっぷり使った特色ある住宅を建てており、「今建てたいと言われてもスケジュール的に無理です」と言ってしまうほど忙しい会社です。
 
短期間で安定経営の工務店にできた秘密は何なのか。
それは、大手FCやハウスメーカーにいた経験から、工務店経営を変えたことでした。
経営学の考え方を取り入れて、「こうすれば良くなる」という枠組を作ったのです。
 
たとえば、高性能な住宅を建てる工務店は道内にたくさんありますが、全てが経営順調なわけではありません。良いモノを作るから売れるとは限らないからです。
 
「家づくりは性能追求が目的ではなく、性能の良い住宅でお客さまにどんな利益があるのかをわかりやすく説明することが大事」と言い、「自社の家づくりの良さをアピールするには、デザイン力や写真の力も大事」と言います。
工務店は技術力を追求するだけでなく、情報発信力や営業力、経営力などバランス良く取り組んでいかないとダメだというのです。
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※性能の良い住宅と、ローコスト住宅との比較。細かい計算の部分は意図的にぼかしています
 
しかし、大手メーカーのように広告宣伝費を大量にかけることはできません。どうするか。経営学で「弱者の戦略」と言われるランチェスターの考え方を取り入れます。
8年前、当時はさほど力を入れない工務店が多かった中で、相模さんはホームページにブログを積極的にアップします。そのことで契約が取れ、手応えを感じたそうです。
 
その後、ほとんど毎日ブログを更新し、業界からも一目置かれる存在となり、有名になります。
 
びっくりしたのは、週末の完成見学会の前にわずか2時間で家の内外観の写真を社長自ら撮影し、夜にはまとめてホームページに公開してしまうことです。
 
「撮影用の家具を持ち込み、ささっと撮って、フォトショップで少し修正するなど、ルーティーン化しているのでラクです」と相模さんは言われるのですが、ホームページを拝見すると写真の腕前はかなりもの。これがいかに大変なことかは、建築写真を撮ったことがある人なら想像がつくでしょう。
 
また、高性能な住宅を提供するために、勉強会に加入し、技術情報系のサイトで勉強します。いいと思ったことはとことん取り組んでいるようです。たとえば、南面の窓は、日射取得を優先したガラスを選びますが、北海道でも意外とそうなっていない地域があるそうです。「断熱先進国の北海道がどうして?」と言います。
 
「当たり前にやるべきと思われることを、愚直なぐらいまじめに取り組む」
これが短期間で経営を安定させた秘訣なのかもしれません。
 
「設計は○○先生をベンチマークにしています。Web活用は○○工務店を参考にしています」など、自分が強化したい分野にそれぞれ「お手本の先生」を決め、学んでいるのだそうです。
 
ちなみに、4年ほど前から相見積もり(数社から住宅の見積を取ること)がなくなったそうです。Webで詳しく情報発信をし、会社のファンになってもらってから設計申込みをしてもらう。そのときに「相見積もりをしていない」かどうかを確認しているそうです。
 
見積をすれば、契約率は90%を超えるとか。つまりムダな営業活動をしなくて済むわけです。だから、適正な価格で住宅を建てても利益が取れる。会社にもお客さまもいいことだらけです。
 
地域性の違いなど、十勝で同じことができるかどうかはわかりませんが、お客さまと工務店の信頼関係ができた上で設計をするというスタイルはぜひ真似たいところです。
 
 

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